YJ COUNSELING OFFICE blog

福山市にある『みんなのカウンセリングルーム』の代表ブログです。

トラウマとは何か(最終)~「こころのキズ」のメッセージ~

今回で「トラウマとは何か」については、最後となります。わかりづらい文章もあったと思いますが、お付き合いしていただきありがとうございます。

最後は、カウンセリングの現場で「こころのキズ」の問題に取り組む理由についてや、また、一見ネガティブに思える「こころのキズ」という問題が、実は僕たちに、とてもポジティブなメッセージを与えてくれていることについて、書いてみたいと思います。

 

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カウンセリングでは、「こころのキズ」を癒すにあたって、究極的には「トラウマ的な体験」を語ることを要求し、クライエントが、記憶を物語れることを大きな目標として考えています。物語れていくことで、「断片的な記憶」が一つずつ、繋がっていき、一度は引き裂かれた世界と自分との関係が修復され、記憶の複合体としてのまとまりがついてきます。最終的には、「自分の危機」として体験された圧倒的な記憶が、「昨日の夜、漢字を覚えた」というような「ありふれた普通の記憶」になれば、「こころのキズ」に悩むことはなくなってくると考えられます。

しかし、いきなり「全部わかるように、話して下さい」と、言うことはなく(そもそも難しい)、クラエイントの状態や、取り組みたい課題に準じて、クライエントのペースを大事にしながら、ゆっくり取り組んでいきます。時には、そのペースが早すぎる場合、こちらから、「今度にしておきましょう」と促す場合もあります。

 

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しかし、そのようなカウンセリング過程は、一筋縄ではありません。

そのことがいかに難しい作業であるかは、3回にわたって触れてきた「こころのキズ」の「理解することの難しさ」や、「こころのキズ」と、「体験」の問題、「記憶」の問題の関係を紐解いてみると、なんとなくですが、理解していただけると思います。

yjcounseling.hatenablog.com
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それよりなにより、このブログを読んでくれているクライエントが、そのことは、一番よくわかってくれていると思います。

 

その作業の最中に、クラインエントは、圧倒的な恐怖や不安峻烈な“現実的な”な痛みに襲われたり、時には、その記憶にとらわれてしまい、日常生活がままらなくなることもあります。気分の落ち込みといったネガティブな感情に包まれることもありますし、どこから聞こえる自分をののしる声の存在(幻聴)に悩むこともあります。そのようなことがあると、「カウンセラーは、ただ自分を苛めているだけなのかもしれない」と、怒り落胆失望を感じることも場合によってはあり得ます。

 

では、なぜ、そのような難しくて、時にしんどい思いをしてまでも、カウンセリングでは、「こころのキズ」の問題に取り組まなければいけないのか。それは、単に、「トラウマ的体験」を物語れるようになることで、それが、「昨日の夜、漢字を覚えた」というような「ありふれた普通の記憶」にすることで、「トラウマ症状で困っているクライエントの症状を取り除くことができる」と考えているからだけではありません。

このことは、もしかしたら、「クライエントがヨクナルコト」に関係することなのかもしれませんが、それは、「こころのキズ」から、クライエント自身に感じてもらいたい、こころが発するポジティブなメッセージを受け取ってもらいたいからであります。そのことは、「症状の消失」より、本質的で、それ以上に、大切なことなのかもしれません。その本質的で、それ以上なことがあれば、たとえ、「症状」に苦悩することがあったとしても、人は強く生きていけるのかもしれません。

 

そのメッセージとは、一言で言うと、

 

「あなたは、“生きたい”と、強く思っている」

 

ということではないかと思います。

 

「こころのキズ」を負うということは、一件ネガティブに思えるような出来事ですが、実は、強く「生きたい」と、その人のこころが、訴えているということではないかと考えております。体験の話で触れたように、僕たちは、体験を通じて、「生きている」という「命の感覚」を得ることができます。しかし、このことは、あくまでも受身なものであり、控え目に表現しても、「生かされている」と感覚しか得ることができません。

もちろん、この「生かされている」ということを感じることも大切なことではありますが、僕たちは、もっと、世界や自分に対して、能動的な存在なのではないでしょうか。

僕たちの能動性は、人間が、「自分の危機」に瀕した時に、改めて気付かされるものではないかと思います。

 

「自分の危機」に瀕した体験を引き裂き、なんとか「自分」や「命の感覚」を保とうし、自らのこころにキズをつけてしまう所以は、僕たちが、「生きたいと思っているから」にほかありません。この「こころのキズ」の裂け目から光輝く僕たちの無意的な能動性に気付くことは、とても大切なことのような気がします。

もしかしたら、僕たちが、今、このように何気なく生活して、なんとなくですが、明日の夕飯を楽しみにできたり、「10年後は、○○」など将来を語ったり、当たり前のように「死なずに生きたい」と思えているのは、僕たちが、無数に体験してきた、「こころのキズ」を乗り越えてきたからなのかもしれません。さらに言えば、仮に「こころのキズ」がなかったとしたら、もしかすると、生きる意欲は湧くことはなく、自分の前になんらかの危機や危険が訪れたとしても、なんの躊躇もなく、自分の命をいとも簡単にささげてしまうのかもしれません。

 

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人は、「こころのキズ」を負うような出来事に遭遇し、その後、訪れる様々な苦悩に悩み、時には、「死にたい」と思うこともあります。災害や病などで、大切な人を失ったり、大きな失敗をしたり、誰かに差別されたり、いじめられたり、また、なにかしらの「こころのキズ」が、明確に自覚されなくとも、なんとなくですが、「生きていく自信」がなくなったり、「もう死んだ方がましだ」と、自分の人生に、悲嘆することも少なくありません。

しかし、僕たちのこころの底から湧き起こる、「生きたい」というメッセージに目を向けることができれば、どんな深刻な事態においても、自分に自信を持って、力強く生きていけるのではないかと考えております。

カウンセリングで、「こころのキズ」の問題に取り組む所以は、カウンセラーのみならず、クラエイントと一緒に、その問題に向き合って行きたいからであります。カウンセリングを通じて、自分自身を取り戻し、どんなつらい状況でも「あなたは“生きたい”と強く思っていたこと」を、一緒に感じて、思いだしていきましょう…。

 

 

 

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