クリニックの選び方 - YJ COUNSELING OFFICE blog

今日は、クリニックの選び方について書きたいと思います（※ここでいう「クリニック」とは、主に、精神科や心療内科のことだと思ってください）。

初めて精神科や心療内科を受診する時、悩まられる方は沢山いらっしゃいます。

人生の中で、精神科や心療内科を受診することは、そうめったにあることではないので、「どのクリニックを受診していいのか」、悩んでしまうのも無理もないと思います。実際に、どのクリニックに受診していいのかわからず、所謂、“オススメの病院”を紹介してほしいとのご相談を受けることも多々あります。

色んな人の評判をきいてみたり、インターネットのポータルサイトや、クリニックのホームページ、口コミを参考にしながら、なんとなくよさそうだなと思うクリニックを選んでいる方は、比較的多いのではないかと思います。特に、『〇〇〇障害の専門医』などと、ある専門分野に特化していること、その病院に在籍している医師の学歴や経歴などは、割と決め手になることがあるみたいです。意外なこととしては、ホームページの印象や、クリニック内のインテリアの雰囲気をみて決められる方もいるみたいです。

基本的には、どのクリニックを選ぶのも、クライエントの自由なので、クリニック選択について意見することはありませんが、『オススメの病院を教えてほしい』と聞かれると、必ずと言っていいほど、

『近くの通いやすいクリニックを受診してみてください』

と答えるようにしております。

なにも、探すのがめんどくさいから、このように答えているのではなく、しっかりとした理由があります。その理由や根拠については、後に詳しく書くとして、大雑把な理由としては、3つ挙げられます。

【理由１】医師は、プロフェッショナルの集団である。

この理由は、とても大切なポイントです。医師は、日本に数あるプロフェッショナル集団の中でも、非常に優れたプロ集団であることは、ほぼ間違いありません。プロフェッショナルとは、「ある特定の理論的枠組みや、その理論を根拠とした、高度に精緻化された技術を身に着けている人」と言えます。クリニックの医師の処方というのは、なんとなく医師が勝手に決めているのではなく、そのほとんどが、「もうすでに（科学的に）決まっている処方」を取捨選択していると言っても過言ではありません。その「もうすでに（科学的に）決まっている処方」を取捨選択する為の厳しい訓練、膨大な知識量をインプットする過程を潜り抜けたツワモノたちが、まさに医師だと思います。

たしかに、「〇〇の専門医」や、「名医」という方がいらっしゃるのは事実ですが、僕たちが、生活をしていて、精神科や心療内科を受診する時に考えられる病気は、そのほとんどが比較的オーソドックスなものです（内科でいう「風邪」です。）。風邪を引いて、病院を行くのに、「名医」を探す人がいないように、むしろ、「すでに決められた処方」を適切に処方する、プロ集団をまずは信頼することが大切だと思います。

【理由２】精神科や心療内科の通院は、他の専科に比べ、比較的長い。

これも、大事なポイントであり、他の専科と少々異なるポイントだと思います。精神科や心療内科に行かれた方はわかると思いますが、クリニックで処方されるお薬は飲んだら、内科の風邪薬のように、2，3日してよくなる、というものではありません。ほとんどが、じわじわ効いてきたり、長いお薬の調整の中で、効果が次第に発揮されるようなものです。とにかく、長い歳月がかかります（たまに、すっとよくなる人もいますが、やはり稀です）。ですので、たまに、遠い市外や、県外のクリニックに満を持して受診しみたものの、その後、通院するのがしんどくなって、結果的に心理的な負担感が多くなり、通院自体がストレスとなります。精神科や心療内科で治療が必要な数多の病気で、ストレスが大敵であることは言うまでもありません。最悪の場合、途中で治療が途絶えることもあるので注意が必要です。

したがって、仕事帰りや、家の近くの通いやすいのが長期的に考えてベストです。

【理由３】クリニックだけに、期待をよせていては改善は難しい。

精神科や心療内科で治療が必要な病気は、勿論、生物学的な原因に由来するところが大きいですが、先にもストレスの問題に触れたように、社会的な要因や、個人の心理的な要因が大きな意味を持ってきます。たとえば、「人間関係の悩みから鬱病」となったとします。そこで、鬱の症状の改善をターゲットとして、クリニックでお薬を飲んだからといって、「人間関係がよくなる」とは限りません。また、「人間関係が良くならないこと」はクリニックのせいではないことは言うまでもありません。したがって、人間関係をよくするためには、クリニック以外にも、自分自身と他者の問題を解決できるような社会的資源をみつけていくことが大事です。クリニックに多くを期待することがなければ、遠くを選ぶ理由はほとんどなくなるかと思います。

以上のような理由を簡単に記してみました。

クリニック選びは、あまり悩まず、ある意味、気軽に受診してみたらよいと思います。医師の技術を信頼しながら、過剰な期待を寄せないことからはじめて見ましょう。

万が一、万が一、その近くのクリニックが、「ヤブ医者」だったとしても、いくらでも取り返しはつきますで、ご安心ください。

f:id:YJcounseling:20170812233546j:plain